川渕圭一さんインタビュー

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  • 内科医

“2足のわらじ”というライフスタイルがベストな状態で実現

【氏名】川渕圭一(かわふちけいいち)さん
【資格】医師
【前職】総合病院勤務
【現職】フリーの内科医・作家
【目標】長いスパンで計画を立てるほうではないので、1年後にどんな人生を歩んでいるかは自分でも分からないというのが正直なところです。今、やるべきことと真剣に向き合いながら、今後を模索していきたいですね

 

 

世病院勤務復帰のウォーミングアップとして登録したのがきっかけ

実は、30歳になるまで医師になるとは思ってもみませんでした。父は、腕も人間性も素晴らしい脳神経外科医で尊敬していましたが、私は父とは正反対の性格で医師には向かないと思っていました。東大に入学し、大学院を中退。フリーター、パチプロ、サラリーマン、転職、引きこもり…。ちょっとした波乱万丈の20代でした。そんな20代があったからこそ、30歳になったとき、さまざまな経験をした自分みたいな人間が、医師になってもいいんじゃないかと思えたのです。

それから医学部を受け直し、37歳で研修医に。5年弱という間でしたが、病院勤めのなかで、上に立つ大人たちの滑稽な姿に多くの不満や怒りを覚えました。本当に大切なことはなにか? 当たり前のことですが、すべては患者さんのために何をするかということが最優先にも関わらず、そうではない世界も存在したのです。いろんな思いが募り、半年ほど休憩をとろうと病院を退職。

そして、その間に本を書きたいという思いが沸きあがり、執筆活動を開始しました。ただ、そのころは一冊書き終えたら、病院に復帰するつもりでした。ちょうど本を書き終えたころ、新聞広告でパソナメディカルのことを知り、病院復帰のウォーミングアップのつもりで登録したのがきっかけです。

 

ていねいな説明と専門医へつなげる窓口 それが健診医の役割

現在は、主に健診医として仕事をしています。健診の意味というのは悪いところを探すことより、受診者の話を聞き、ていねいに教えてあげることだと思っています。できることは限られていますが、”専門医につなげる窓口”として大切な役割だと思っています。説明する医師でありたいですね。病院勤めのころも、いつも患者さんのベッドサイドにいましたので、そういった意味では今もスタンスは変わっていないかもしれません。医師とは究極のコミュニケーション業です。「あらゆる庶民の味方」でなくてはならない。患者さんが100%本音で話すのだから、こちらも真剣に向き合わなくてはなりません。健診という現場では、数をこなさなければならないという現状もありますが、どんなに忙しくても、常に受診者とコミュニケーションをとるようにしています。気持ちがあれば、たった1分でも、受診者と実りあるキャッチボールができるんですよね。

しかしながら、今の健診システムでは結果を送っているだけで、還元できていないと感じる部分もあります。結果だけを見ても受診者にはわかりにくい。本当はその結果を説明することの方が重要です。結果が出てから医師が出向いて説明をするというのが理想。今後、そういう健診システムが構築されるといいなと感じています。

 

ライフスタイルは自分でつくっていくもの 自分らしい働き方を探して

毎日違う場所で、違う人と仕事をして…。鞄ひとつぶらさげてどこにでもいける。そういうスタイルが自分に合っているんだと思います。恵まれた環境をありがたいと思うとともに、健診医という仕事を楽しんでいます。そして、健診医の仕事が落ち着く12月後半〜2月は執筆活動をし、3月以降の平日は医師の仕事に専念しながら、空いた時間を使って出版に向けての準備をしています。再度、健診の減る8月はプロモーション活動や講演など、全国各地を動き回っていますね。

フリーというシガラミのない立場を生かして、これからもできることを模索していきたいと思っています。自分の役割はメッセンジャー。健診医としての仕事も、 本を書くのもそのひとつです。病院勤務は24時間体制で土日もないというのが現実。今ももちろん、仕事中は集中していますが、行き帰りの電車や休日には違うことを考える時間があります。時間を上手くマネージメントすることで、”2足のわらじ”というライフスタイルを両立できる環境ができました。

自分のライフスタイルは自らつくっていくもの。言葉は悪いかもしれませんが、登録制というシステムは、自分のライフスタイルに合わせて”大いに利用”できます。ただ、何でもやってみなくては分からない。自分の足で説明を聞きに行って、自分に合う働き方を探してみるのがいちばんです。私みたいに組織に属するのが苦手な方とか、なにかしら時間が必要という方には有効なシステムだと思います。

また、いつも同じところにいて、同じ人に会っていると、環境や立場に縛られてしまいがちです。外に飛び出して、いろんなものを見て、いろんな人と出会うことも大切。医師の原点に戻る機会として、こういうシステムを利用するのもひとつの手段だと思います。

 

◆◇◆ 川渕圭一さんの主な著作紹介 ◆◇◆

  •  研修医純情物語 – 先生と呼ばないで (幻冬舎文庫-2011/02)
  •  ふり返るなドクター (幻冬舎文庫-2011/04)
  •  吾郎とゴロー (幻冬舎文庫-2011/08)
  •  ボクが医者になるなんて (幻冬舎文庫-2012/04)
  •  [小説] 東大過去問・現代文 (文庫ぎんが堂-2012/04)
  •  ぼくのおじさん (講談社-2003/05)
  •  セカンド スプリング (PHP研究所-2006/02)
  •  いのちのラブレター (実業之日本社-2010/07)
  •  マゾ森の夏休み (汐文社-2011/07)

 

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